パーキンソン病の治療薬一覧・パーキンソン病用語集

脳神経内科情報

 パーキンソン病には治療薬がたくさんありますし、症状などを説明するのにたくさんの専門用語を使わなければなりません。患者さんからご質問を受けることが多いため、治療薬の一覧と用語集を下記に作成していきたいと思います。随時更新していきます。

◯パーキンソン病の治療薬一覧

・L-dopa製剤(エルドパ製剤)

 パーキンソン病治療の基本です。パーキンソン病の患者さんの脳内では基本的にドパミンという物質が不足しています。そのドパミンを脳に補充してくれるのがL-dopa製剤です。

☆L-dopa製剤の例

メネシット、ネオドパストン、マドパー、イーシードパール、ネオドパゾール、カルコーパ

・ドパミンアゴニスト

 上記のL-dopaのようにドパミン自身を補充するものではないものの、ドパミンの受容体に直接作用して「ドパミンであるかのように」効いてくれる薬です。若年の患者さんやL-dopa製剤が副作用などで使えない・増量できない患者さんに用いられます。

☆ドパミンアゴニストの例

プラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチン(ニュープロパッチ)、アポカイン

・MAOB阻害薬(マオビー阻害薬:モノアミン酸化酵素B阻害薬

 ドパミンを分解する酵素であるモノアミン酸化酵素の働きを阻害する物質で、脳内のドパミンが減るのを防いでくれる薬です。発症早期の患者さんやウェアリングオフが出てしまった患者さんなどに用いられます。

☆MAOB阻害薬の例

セレギリン(エフピー)、ラサギリン(アジレクト)

・COMT阻害薬(コムト阻害薬:カテコール-O-メチル基転移酵素阻害薬)

 内服したL-dopa製剤が体内でCOMTという酵素によって分解されるのを防いでくれる薬です。したがって、L-dopa製剤と一緒に内服します。

☆COMT阻害薬の例

エンタカポン(コムタン)、オンジェンティス

・アマンタジン

 脳内でのドパミンの量を増やしてくれる物質です。ジスキネジアに効果があるとされています。商品名はシンメトレルです。

・抗コリン薬

 以前はパーキンソン病の振戦(ふるえ)によく効くとして使用されていたのですが、認知機能障害・せん妄・幻覚・便秘・排尿障害・口渇・転倒の原因になるとされ高齢の方や認知機能低下のある患者さんにはあまり使わないことになっています。特定の状況では使用する必要が出ることもあるので主治医の先生とよく相談して使用します。

・ドロキシドパ

 ノルアドレナリンという物質に脳内で変換され、パーキンソン病患者さんのすくみ足や無動に効果を発揮するとされています。また、パーキンソン病患者さんの起立性低血圧にも効果があります。

☆ドロキシドパの例

ドプス

・ゾニサミド

 もともとはてんかんの薬として使用されていましたが、パーキンソン病患者さんの運動症状の改善効果があることが判明し、使用されるようになりました。L-dopa製剤などで効果が十分得られなくなってきた患者さんなどに追加で使用していくことが多い印象です。

☆ゾニサミドの例

トレリーフ

・イストラデフィリン

 アデノシンA2A受容体という脳内で運動機能の調節に関与する部位に作用して運動機能を改善させてくれます。ドパミンとは全く異なる作用メカニズムのためL-dopaを増やせない方などによく用いられます。比較的病状が進行してきた患者さんに使用します。

☆イストラデフィリンの例

ノウリアスト

◯パーキンソン病用語集

【症状に関連した用語】

・ウェアリングオフ/wearing-off

 パーキンソン病患者さんが長年L-dopa製剤で治療されていると、段々と薬が効く時間が短くなり、次の薬を内服する前に薬の効果が切れて身体が動かしにくくなるなどの症状が出ることをウェアリングオフ現象と呼びます。

・レム睡眠行動障害

 一部のパーキンソン病患者さんでは睡眠中に無自覚に身体が勝手に動き、ベッドから落ちたり隣で寝ている家族にパンチをしたりするなどの行動が出ることがあります。レム睡眠の最中に起こるためレム睡眠行動障害と呼ばれています。なお、パーキンソン病の発症の前からレム睡眠行動障害が出る患者さんもいます。

・振戦

 ふるえのこと。手振戦、手指振戦、体幹振戦など部位と組み合わせて使う。また、静止時振戦、姿勢時振戦(特定の姿勢で生じる振戦)など振戦が生じるタイミングと合わせて使うこともある。

・すくみ足

 歩行する際に一歩目が踏み出せない状態。一歩目が踏み出せるとその後はスムーズに歩ける場合もある。

・on, off/オン, オフ

 スイッチを入れたり切ったりするように急に症状が変わる現象のことをオン/オフと呼ぶ。ウェアリングオフは「薬の効果が切れてきたタイミング」で起こるが、オン/オフは薬の効果とは関係がなく、薬を飲んでも改善しない。

・no on, delayed on(ノーオン、ディレイドオン)

 L-dopa製剤を内服しても効果が見られない現象をno on、L-dopa製剤を内服してから効果がでるまでに時間がかかる現象をdelayed onと呼ぶ。いずれもL-dopa製剤がうまく身体に吸収されていないことが原因であり、服薬方法の変更などの相談が必要。

・ジスキネジア/ディスキネジア/dyskinesia

 自分では止めることができない身体のおかしな動きの総称。パーキンソン病患者さんではL-dopa製剤を内服していると身体がクネクネと動いてしまうジスキネジアを認めることが多い。

・peak-doseジスキネジア(ピークドーズジスキネジア)

 L-dopa製剤が一番効いているタイミングで生じるジスキネジアのこと。

・diphasicジスキネジア(ダイフェイジックジスキネジア)

 L-dopa製剤が効き始めるタイミングお効かなくなってくるタイミングの二相性に生じるジスキネジアのこと。

・ジストニア/ディストニア/dystonia

 身体の筋肉が異常に緊張・収縮しておかしな角度・姿勢で固まってしまう状態のこと。パーキンソン病患者さんでは病気そのものの症状としてジストニアが出ることもあるし、薬の副作用でジストニアが出ることがある。寝不足だとまぶたがピクピクする方も多いとお見ますがあれもジストニアの一種です(眼瞼痙攣)。

・off periodジストニア/on periodジストニア(オン/オフペリオッドジストニア)

 L-dopa製剤などの効果が出ている時間帯に出現するジストニアをon periodジストニア、L-dopa製剤の効果が低下してオフになった時に出現するジストニアをoff periodジストニアと呼ぶ。

・アパシー

 感情がなくなったり、意欲が低下したりした状態。パーキンソン病患者さんでも症状として出現することがあります。

・アンヘドニア

 快感が消失した状態。喜びが得られる事柄に興味がなくなる状態。パーキンソン病患者さんでも症状として出現することがあります。

【検査に関連した用語】

・頭部MRI, 脳MRI

 頭の中の脳の「かたち」を評価する検査。CTと異なり被爆がない。ただし検査に時間がかかる。

・MIBG心筋シンチグラフィ(エムアイビージー心筋シンチ)

 MIBGという物質を注射して心臓を特殊な機械で撮影することで心臓の交感神経にどれくらいMIBGが集まっているかを評価することで交感神経の機能を調べる検査です。パーキンソン病患者さんではこの検査結果が異常(交感神経の機能が低下している)となることがわかっており、パーキンソン病の診断に有用です。

・DATスキャン/ダットスキャン

 脳を特殊な機械で撮影することで脳内のドパミントランスポーター(DAT)という物質の分布や量を調べる検査です。ドパミン神経が減少しているか評価できるためパーキンソン病の診断に有用です。

・脳血流シンチグラフィ

 脳の血流が部位ごとに多い/少ないを評価することができる検査です。パーキンソン病患者さんでは他の疾患の除外のために実施されることがあります。

・OSIT-J/オーシットジェー

 パーキンソン病患者さんでは嗅覚が低下する方が多いことから、嗅覚を調べるために実施される検査。検査内容はあまり言えませんが個人的にはかなり面白い検査です。

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