レビー小体型認知症とは

脳神経内科情報

 認知症にはいくつか種類がありますが、最も代表的なものはアルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)で名前を聞いたことくらいはある方が多いと思います。ではレビー小体型認知症はどうでしょうか。実はレビー小体型認知症も比較的たくさん患者さんがいらっしゃる認知症で、認知症患者さんの20%程度を占めるとも言われています。

 レビー小体型認知症の特徴を一言で言うと「幻視(げんし)」といえると思います。アルツハイマー型認知症によくあるような「おばあさん、ワシ朝ご飯は食べたかの?」というようないわゆる「物忘れ」症状が前面に出る認知症とは異なり、「そこに犬がいる」「子どもが部屋に入ってきている」というような幻視症状が目立ちます。レビー小体型認知症の症状は下記4つに代表されます。

  1. 具体的でありありとした幻視
  2. 変動する認知機能
  3. パーキンソニズム(パーキンソン症状)
  4. レム睡眠期行動異常症

それぞれ解説していきます。

1.具体的でありありとした幻視

      「そこに犬がいる」「そこに子どもがいる」などと今そこにありありと見えているというような幻視が特徴です。「さっきまでそこに子どもがいた」などの「妄想」とは一線を画します。幻視としては犬猫などの動物や小さな子供が見える方が多く、虫・ヘビなどが見えてつらそうな方も残念ながら多いです。私の患者さんではなぜか「ベッドにお相撲さんが寝ている」という方も経験があり、患者さんにより様々ではあります。幻視に似たものとしてパレイドリアというものがあり「コンセントが犬に見える」「電気の紐がヘビに見える」などと言う症状が出る方も多い印象です。

      2. 変動する認知機能

        「変動する」というのは「いい時もあるし悪い時もある」と言い換えることができます。1日の中でシャキッとして普通に会話できることもあれば、ぼーっとした様子で集中力が無くなって注意力散漫となったり頭脳明晰さが失われたりということが特徴的です。友人と仕事の難しい話をできていたと思ったらボーッとしてしまい一問一答の会話がやっとやっとになってしまう、という感じです。外来や訪問診療ではよくご家族が「さっきまでしっかりしていたのにお父さんどうしたの!」と家族がぼーっとした患者さん御本人に声掛けしている場面をよく目にします。

        3.パーキンソニズム(パーキンソン病)

          生活上こちらが問題となることが多く、神経内科専門医は腕の見せどころとも言えるかもしれません。「パーキンソン病とレビー小体型認知症の違いは?」というと、一言でいうと「同じもの」です。極論すると「パーキンソン症状がひどい人がパーキンソン病、認知症症状がひどい人がレビー小体型認知症です」と言っても良いかもしれません。ですので「パーキンソン病」と診断されている患者さんが認知症症状で困ったり、「レビー小体型認知症」と診断されている患者さんがパーキンソン症状で困ったりすることは少なくない、どころか大変多いです。

           レビー小体型認知症の患者さんの場合、パーキンソン症状の中でも自律神経障害が目立つ方が多く、対応に難渋することがしばしばです。自律神経障害は下記のものが挙げられます。

          ・便秘症

          ・血圧変動(起立性低血圧や食事性低血圧など)

          ・排尿障害

          ・発汗障害

          ・流涎(唾液が垂れる)

          ・性機能障害

          などなどです。それぞれに特効薬があるわけではないので、関連する薬剤の調整だけではなく、生活環境指導により患者さんのQOL改善を図っていく必要があります。血圧変動に伴って失神を繰り返す方なども多く、救急車を呼ぶことが日常茶飯事になってしまうご家庭もあり、指導が非常に重要です。また便秘症といっても放置すると腸閉塞を起こして命に関わる事態となる患者さんもいますので、しっかり対応していく必要があります。対応方法についてはまた折を見て本ブログで解説していきます。

          4.レム睡眠期行動異常症

            実は最も早く出現する症状がレム睡眠期行動異常症と言われています。レム睡眠期行動異常症とは、寝ている間の「レム睡眠期」という期間に突然大声で叫んだり、起き上がってボクシングを始めたり(本人は無意識)してしまうような行動を起こす症状です。多くの場合は御本人は夢を見ており、夢の中の行動がそのまま現実に繋がってしまうことが多いようです(例えば「夢の中で誰かと闘っていたら本当にベッドで隣に寝ている奥様に殴りかかっていた」など)。

            上記4つの症状と関連して感覚の障害や痛み、嗅覚の障害など多彩な症状をレビー小体型認知症の患者さんは経験されるのが特徴です。レビー小体型認知症の様々な症状を患者さんと共有し、寄り添ってくれる家族や医療従事者の存在が患者さんの穏やかな療養につながると思いますので、レビー小体型認知症の患者さんに関わる方は是非症状をよく見てみていただければと思います。

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