お家にお薬を届けてもらう~訪問薬剤管理指導・居宅療養管理指導

在宅医療情報

 訪問診療をしていると「先生がお薬も持ってきてくれるの?」と言われることがよくあります。お答えとしては、数種類のお薬は実はストックとして常備していますが、処方した薬はクリニックからお届けできるわけではないことをお伝えしています。では診察をして訪問診療の医師が作成した処方箋はその後どうなるのでしょうか?外出できないから訪問診療を頼んでいるのに、お薬を薬局に取りに行くことなんてできないのに!

 当院では次の2通りの方法でお薬を受け取るようにご案内しています。

  1. ご家族や、場合によってはヘルパーさんや訪問看護師さんに薬局に処方箋を持っていってもらいお薬を持って帰ってきていただく。
  2. 薬局に当院から処方箋をFAX, 郵送して薬局にお薬を患者さんのお家に届けてもらう。

1はシンプルで処方箋を薬局に持っていける人に取りに行ってもらうという方法です。患者さんと同居、または診察の日に訪問しているご家族等に処方箋をお渡しして対応していただきます。追加料金不要ですし、ご家族が薬の内容や薬剤師さんからの説明をきちんと聞いてお薬をもらえるというメリットがあります。状況によりけりですが、介護サービスを受けている方でヘルパーさんや訪問看護師さんにお薬を取りに行ってもらい間接的に薬の内容や薬剤師さんからの説明を聞いてもらうパターンもあります。

 2は「訪問薬剤管理指導」や「居宅療養管理指導」と呼ばれるものになります。当院が診察をして処方箋を作成し、診察後に処方箋を薬局にFAX, 郵送して薬局にお薬のお届けをお願いします。追加料金がかかってしまうデメリットはありますが、薬剤師さんが直接お家に訪問してくれて薬の説明や、お薬カレンダーへのセットまでしてくれることが多いため、患者さんは大変便利と喜ばれます。また、医療者・介護者側にとっても薬剤師さんが訪問後に「訪問指導報告書」を作成して状況を報告してくれるので大変助かります。「薬剤師が訪問したところ実は前に出された薬がまだ余っていましたので飲み忘れがあるようです」とか「先生には言えなかったが〇〇という薬を飲むと眠くなってしまうことが多いとのことです」などと大変有用な報告が入ることもしばしばです。

 ここからは少し専門的な内容ですが訪問薬剤管理指導と居宅療養管理指導について詳しくご説明します。

まず表にまとめると下記のようになります。

居宅療養管理指導在宅患者訪問薬剤管理指導
利用保険介護保険
介護申請済みの方はこっち!
医療保険
介護申請していない方
対象者通院困難で要介護認定のある方通院困難で要介護認定のない方
値段1割負担で518円
家か、施設かなどによります
1割負担で650円
報告書の送付先医師とケアマネージャー医師
契約書の必要性ありなし

上記を見ていただくと分かる通り、介護保険の利用がある要介護認定されている患者さんは介護保険を利用した「居宅療養管理指導」を受けることになり、そうでない方は医療保険を利用した「在宅患者訪問薬剤管理指導」を受けるということになります。若干料金が医療保険の方が高いことと、ケアマネージャーが関わるかどうか、契約書を交わすかどうかに違いがあります。ただそれ以外の部分は基本的に同じようなものと考えていただいて大丈夫です。

最近は在宅オンライン薬剤管理指導やリフィル処方箋というものも登場し、患者さんが処方薬を入手する方法には様々なものがあります。Amazon薬局のようなサービスも登場しますます便利になっている時代と言うことができます。ただ、薬には思いがけない副作用を持つものや、患者さんの状態によっては使えない薬などもあるのが事実です。患者さんの中には「あそこの薬剤師さんとは顔なじみで私のことをよくわかってくれているのよ~」とおっしゃる方がいます。そのような自分が信頼できる「街のお薬屋さん」がいると本当は安心なのかもしれないなと思っています。

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