脳神経内科の外来には「手がふるえる」「指がふるえる」「文字を書く時にふるえる」「字が上手く書けなくなった」というような訴えの患者さんが大変多くいらっしゃいます。手がふるえるような病気にはざっくり下記のものが挙げられます。
・パーキンソン病/パーキンソン症候群
・脳梗塞(小脳や視床など様々な部位が原因となり得ます)
・本態性振戦
・書痙(ジストニアという運動異常の一種と言われます)
・甲状腺機能亢進症
・薬剤性(薬の副作用でふるえている)
まずはできれば脳神経内科の専門医の外来をしっかり受診して神経診察をしてもらい、検査も実施して上記の疾患のどの可能性が高いのか診断してもらって下さい。ただ、脳神経内科専門医であっても上記の分類にスパッと患者さんを当てはめるのは難しいことがあります。「本態性振戦」と診断して数年間外来に通ってもらっていたら途中から「パーキンソン病」に移行した、などという例も経験されます(科学的に、論理的にそう説明するしかない例があります)。
脳神経内科専門医一覧
本態性振戦の治療
さて、今回は本態性振戦の治療についてご説明したいと思います。本態性振戦については、まず薬物療法が効果的な場合があります。ただし全ての患者さんについて薬の効果があるわけではなく、効く人と効かない人がいます。副作用に注意しながら、薬が効くか慎重に判定していく必要があります。
本態性振戦の治療薬にはアロチノロールという薬に代表されるβ遮断薬や、クロナゼパムなどのような抗てんかん薬が挙げられます。β遮断薬については血圧低下や徐脈などの副作用、抗てんかん薬については眠気やふらつきなどの副作用の頻度が高く注意が必要です。
薬物療法でどうしても効果が出ない方には脳深部刺激療法 (Deep Brain Stimulation: DBS) という治療方法もあります。DBSとは脳の中に手術で電極を埋め込んで電気刺激を与え、神経の異常な興奮を抑制してふるえを止める治療です。主にはパーキンソン病に対して実施されるものですが、本態性振戦やジストニアにも適応があります。
DBSの詳細、DBSを実施している病院の検索などについてはMedtronic社のページが有用ですのでご参照下さい。
手がふるえるのは日常生活に支障を来たしますし、精神的にもつらいものがあると思います。適切に診断し、治療を受けて少しでもふるえの症状が良くなると良いですね。
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