よくテレビなどでいわゆるおじさんが「カー!ッペ!!」と痰を吐く様子を目にします。周りの人はあまり気分が良くないかもしれませんが、本人はおそらくゴソッと痰が出て気持ちが良いのだと思います。痰はない方が良いですし、あればおじさんのように気持ちよく出したいものです。風邪を引くなどして痰の量が増えると、とても不愉快で苦しい感じがします。中には痰で窒息してしまう方もいるくらいです。
そもそも痰とは何なのでしょうか?痰の主な成分は水分とムコ多糖類やムコ蛋白と言われるネバネバした粘液です。空気の通り道(気道)の粘膜が水分と粘液を分泌することで痰を形成しています。ですので、「痰」は実は身体が意図的に作っているものと言うことができます。ではなぜこのようなネバネバの塊を作るのでしょうか。
ネバネバの塊(痰)を作ることで、気道粘膜のゴミ(例えば大気中の塵や花粉・排気ガス・煙草の煙など)を絡め取り、外に出すのを促していると考えられています。また、免疫細胞も一緒に痰に含ませることでウイルスや細菌を絡め取った後免疫細胞がそれらをやっつける役割も担っているのでは?と考えられています。異物や悪者を絡め取り、それらをやっつけながら外に出す、というのは合理的なシステムのように思われます。風邪を引いて痰が黄色くなるのは免疫細胞や細菌などの量が増えることによると考えられています。
このような痰が風邪を引いた時に増えるのは当然とも考えられます。この痰を少なくしたりどんどん排出を促したりしてしまうのは、身体の良いシステムの邪魔をしているようにも思われます。ただ、痰のせいで苦しい思いをしたり病気が悪くなったりすることがあるのも事実です。本当に痰の薬を使った方が良いのかは医師とよく相談してからの方が良いと思います。
痰が多い方に処方できる薬はいくつかありますが、大きく3種類かと思います。以下に3種類の痰の薬に関して、薬の効果と違いをご説明したいと思います。
痰の薬一覧
・カルボシステイン(ムコダイン)
・アンブロキソール(ムコソルバン)
・ブロムヘキシン(ビソルボン)
◯カルボシステイン
カルボシステインは痰の成分である粘液のムコ蛋白というものの構造を変化させて、痰をサラサラさせると考えられています。痰がサラサラしてくれれば出やすくなる、という仕組みです。さらには空気の通り道(気道)の表面にある線毛という細かい毛を活性化させて痰の排出を促進するとも言われています。また、カルボシステインそのものに気道の炎症を抑えてくれる効果があると言われています。
◯アンブロキソール
アンブロキソールもカルボシステインと似た作用を持ちますが少し異なります。アンブロキソールも痰の粘液にあるムコ多糖類やムコ蛋白に作用し、分解すると言われていますし、気道の線毛運動を促進するとも言われています。カルボシステインと異なるのは、肺サーファクタントと言う肺の中で気道を保護する分泌物を増やして空気の通りを良くしてくれる、と言われている点です。痰や炎症で空気の通り道が塞がれて苦しくなる症状を緩和する、とも言えるかもしれません。
◯ブロムヘキシン
ブロムヘキシンはアンブロキソールとほぼ同じ作用を持ちますが、飲み薬だけではなく「吸入薬」としてよく使われる点が大きく異なると思います。ネブライザーという水や薬をミストにしてくれる機械にブロムヘキシンを入れて患者さんが吸入することで、痰が分泌されやすくなる、という効果があります。個人的には気管切開などがある患者さんで痰がカチカチになってしまい気道にへばり付いて苦しい、というような場合にブロムヘキシンを吸入していただくと痰が出やすくなる、ということを経験します。
上記痰切り薬の作用はまだまだ分かっていない部分も多く、証明が十分でない内容も多いようです。症状に合わせた適切な薬剤を処方してもらい、効果を見ながら調整していくことが重要だと思います。
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